日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.粘膜下腫瘍様の形態を呈したEBV陽性のリンパ球浸潤胃癌(GCLS)の1例

長野赤十字病院 消化器内科
宮島 正行、今井 隆二郎、三枝 久煤A藤澤 亨、森 宏光、松田 至晃、和田 秀一、清澤 研道
長野赤十字病院 外科
長谷川 智行
長野赤十字病院 病理部
渡辺 正秀

症例は36歳男性。2010年7月初旬より黒色便を認め精査目的に当科に紹介。上部消化管内視鏡では萎縮性胃炎を認め、幽門部後壁に正常粘膜よりなだらかに立ち上がる50mm大の粘膜下腫瘍様の隆起を認め、隆起中央部は線状の陥凹を伴っていた。EUSでは2層と3層に主座を置く境界明瞭で内部が均一な低エコー腫瘤を認め、一部4層との境界が不明瞭だった。生検にて充実型低分化型腺癌と診断された。抗Hp抗体は陽性であった。明らかな転移を認めず幽門側胃切除術を施行。肉眼像では病変は4.5×4.0cmで、中心に諮H像を伴う不整な陥凹を認め、陥凹の周辺には正常粘膜で覆われた立ち上がりがなだらかな隆起を認めた。割面は粘膜下層を主座とする境界明瞭な充実性腫瘤で、組織像は粘膜下層から固有筋層にかけ、充実性で腺管国「に乏しい腫瘍細胞の増殖がみられた。また間質には強いリンパ球浸潤を伴っておりGCLSの像を呈していた。EBV-encoded small RNA ISH法にて粘膜下層の腫瘍細胞は陽性であり、EBV関連胃癌と診断した。GCLSは全胃癌の1〜4%の頻度で発生する稀な組織型であるため、若干の考察を含めて報告する。