日本消化器内視鏡学会甲信越支部

68.処置後瘢痕を伴う大腸ESD

山梨県立中央病院 消化器内科
吉田 貴史、小嶋 裕一郎、岩本 史光、廣瀬 純穂、津久井 雄也、細田 健司、鈴木 洋司、細田 和彦、廣瀬 雄一、望月 仁、小俣 政男

当院では2003年より大腸に対するESDを導入しており、2009年12月まで153例の治療例を経験している。今回はその内、生検やEMRなどの処置による瘢痕を伴う3症例について検討し、当院での治療の現状を踏まえて報告する。

【症例1】72歳女性。2007年3月肛門違和感を主訴に前医にて大腸鏡検査を施行し、上行結腸にLSTを認めたため、同年4月当院へ紹介となった。同LSTに対してESDを施行、病理診断はAdenomaであった。2009年3月の大腸鏡検査にて上行結腸生検後の瘢痕を伴う扁平隆起を認めたため、同年8月、同病変に対してESDを施行した。瘢痕部の繊維化が強く、スネアを併用し一括切除したが、穿孔による後腹膜気腫を認めた。穿孔部をクリップにて閉鎖し保存的に加療しえた。病理診断はSerrated adenomaであった。

【症例2】73歳男性。2009年4月前医にてスクリーニング目的に大腸鏡検査を施行し、S状結腸にLST-NGを認めた。EMRを試みるも断念し同年6月当院へ紹介となった。同年9月、同病変に対してESDを施行した。瘢痕部の繊維化が強く難渋したが一括切除した。偶発症は認めず、病理診断はtubular adenomaであった。

【症例3】58歳男性。高血圧症のため通院中の前医にて、便潜血反応陽性のため2008年11月に大腸鏡検査を施行し、横行結腸に隆起性病変を認めた。2009年3月にEMRを試みるも断念し同年4月当院へ紹介となった。同年6月、同病変に対してESDを施行した。瘢痕部の繊維化が強く難渋するが一括切除した。偶発症は認めなかったが、病理診断はpap, SM massive, ly1, V1であったため、外科的治療を追加した。