日本消化器内視鏡学会甲信越支部

64.特発性血小板減少性紫斑病と潰瘍性大腸炎を合併した長期経過2例

済生会新潟第二病院 消化器内科
長島 藍子、本間 照、関 慶一、窪田 智之、石川 達、樋口 和夫、吉田 俊明、上村 朝輝
厚生連村上総合病院 内科
太田 宏信
厚生連豊栄病院 内科
小林 真

症例1.18歳で潰瘍性大腸炎UC全大腸炎型を発症した27歳女性。初回発作時血小板数Plt 11万であった。サラゾピリンSASPとプレドニゾロンPSL40mgで寛解導入し、Pltは18万となった。1年2カ月後にSASPをペンタサに変更、4ヶ月後UCの初回再燃を来たしPltは4.5万まで減少した。PSL20mgで寛解しPltも回復した。その後UCは再燃寛解を繰り返し、PSL20mg以上必要な再燃が8年間に9回あり7回再入院となった。再燃時にはいずれもPltが減少し10万以下となったのは5回、5万以下となったのは3回であった。PAIgG 73.1ng/107個と陽性、PBIgGは陰性。H.pylori感染は尿素呼気試験で陰性であった。経過中血便以外の出血傾向は明らかでなく、UCの治療を行いながら経過観察している。症例2.52歳男性。30歳頃他院でITPと診断されたが症状なく治療されず、定期検診ではPlt 10万前後で推移していた。42歳で検診便潜血陽性から内視鏡でUC直腸炎型と診断されたが自覚症状軽微のため無治療で経過観察されていた。51歳時軟便2〜3行/日となったためペンタサが初めて投与開始された。6カ月後、水のようにさらさらした血便が出現し前医受診、Plt 1.9万と低値であり当院へ紹介入院となった。入院前は鼻出血、歯肉出血が時々あったが持続することはなかった。PAIgG 65ng/107個と陽性、PBIgGは陰性。デカドロン16.5mgから漸減、Pltは33.9万へ回復した。CF所見では下部直腸と虫垂開口部に活動期粘膜を認めた。 従来の報告ではUC経過観察中に特発性血小板減少性紫斑病ITPを発症するものが多いが、症例2はITPが先行していた。症例1もUC発症時にPltが低下しており、ITPが先行していた可能性を否定できない。2例ともUC再燃時にPltが減少したが、ステロイド投与に反応しUCもPlt減少も寛解した。約10年間、UCもITPも重篤化せずに経過が追えた。