日本消化器内視鏡学会甲信越支部

61.虚血性大腸炎に対する抗生物質の有用性の検討

新潟県厚生連 糸魚川総合病院 内科
中村 祐美子、西水 俊准、金山 雅美、野々目 和信、月城 孝志、康山 俊学、樋口 清博

【目的】虚血性大腸炎は研修医にとって身近な疾患であり、日常診療においてもcommon diseaseのひとつである。しかし、治療に関しては抗生物質の使用に対する文献的根拠が未だ存在せず、臨床的に検討の余地がある疾患と言える。今回、当院における虚血性大腸炎症例について、病態と抗生物質投与が症状消失までの日数に与える影響を検討した。【方法】対象は、当院にて2006年3月から2010年8月までの5年間に虚血性大腸炎と診断された62例。年齢、性別、反跳痛の有無、炎症反応、内視鏡所見、抗生物質投与の有無と、入院から食事開始までの日数および入院から症状消失までの日数との関係について検討した。【成績】年齢は28歳から90歳(中央値69歳)で、男女比は19対43であった。入院時の血中CRP値やWBC数は、症状消失日数との間に相関を認めなかった。反跳痛を有する症例では症状消失日数が延長する傾向があり、内視鏡的に全周性の粘膜病変を認めた症例では症状消失日数が有意に延長した。抗生物質はCTMなどが主治医の判断で経静脈的に投与されたが、全体的には抗生物質投与の有無は症状消失日数に影響を与えなかった。しかし全周性病変を認めた症例では、抗生物質投与により症状消失日数が有意に1.1日短縮した。CRPが5mg/dl以上あるいは反跳痛を有する症例では、ほぼ全例で抗生物質が投与されていたため、抗生物質投与の有無による検討はできなかった。一方、軽症例(反跳痛なし、CRPが5mg/dl未満、病変が全周性ではなく一部)では、抗生物質投与によりむしろ食事開始までの日数が延長する傾向を認めた。【結論】全周性病変を認める症例では症状消失が遅延するが、抗生物質投与により早期改善が期待できることがわかった。虚血性大腸炎に対する抗生物質投与の明確な指針が、今後必要であると思われる。