日本消化器内視鏡学会甲信越支部

60.全身化学療法が著効したびまん浸潤型(4型)大腸癌の1例

長野赤十字病院 消化器内科
宮島 正行、田中 景子、今井 隆二郎、三枝 久能、藤沢 亨、森 宏光、松田 至晃、和田 秀一、清澤 研道
長野赤十字病院 病理部
渡辺 正秀

症例は65歳男性。2010年4月より食欲不振を認め、同時に腰痛と全身倦怠感も出現し急速にADLが低下した。5月6日、当院循環器内科定期受診時に胸部Xpにて両側肺門部腫瘤を認めた。造影CTを行ったところ、全身リンパ節腫大を認め悪性リンパ腫が疑われ血液内科入院。5月7日のFDG-PETにて、縦隔、肺門、腹部大動脈周囲のリンパ節、肝臓、骨、S状結腸に集積を認めたため、S状結腸癌の全身転移が疑われ、5月11日に当科紹介となった。下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に全周性の狭窄を認め口側への内視鏡挿入は不能であった。注腸検査にてS状結腸全体に狭窄と著明な壁硬化を認め、生検にて低分化型腺癌と診断された。以上から多発リンパ節転移、肝転移、骨転移を伴う4型大腸癌と診断して、mFOLFOX6による全身化学療法を開始した。原発巣、転移巣共に著明な縮小がみられ、6コース目からベバシズマブの併用を開始。現在7コース終了したが再発徴候はなく外来にて化学療法を継続中である。4型大腸癌は全大腸癌の約1%にすぎない稀な疾患であり予後不良例が多いが全身化学療法が著効しQOLが改善した1例を経験したので報告する。