日本消化器内視鏡学会甲信越支部

57.リウマチ性多発筋痛症で治療中にサイトメガロウイルス腸炎とAAアミロイドーシスを合併した1例

下越病院 消化器科
入月 聡、原田 学、河内 邦裕、山川 良一
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
味岡 洋一

症例は76歳女性。2009年3月に両肩痛・腰痛・発熱など見られ近医受診し、リウマチ性多発筋痛症の診断でプレドニゾロン15mgが投与されていた。2009年7月に乳癌の手術を行い、アジュバント治療としてUFT300mg内服を行っていた。2010年2月頃より下痢、食欲不振がみられ当院初診された。下部消化管内視鏡検査でS状結腸に境界明瞭な不整形・軽度白苔を伴う地図状の打ち抜き様の潰瘍を認めた。潰瘍底の肉芽組織からの生検では酸性の核内封入体をもつ腫大した血管内皮細胞が散見され、サイトメガロウイルス(CMV)免疫染色では多数の陽性細胞が認められた。CMVpp65抗原C7HRPが52/65000で陽性であった。以上よりCMV腸炎と診断した。治療として、ガンシクロビルを投与し一時的に改善見られたものの、短期間で再燃がみられた。再燃時の潰瘍底からの生検にて多数のCMV免疫染色陽性細胞に加えて血管周囲にAAアミロイドの沈着を認め、CMV腸炎とAAアミロイドーシスの合併と診断した。ガンシクロビルの投与とCMV抗体高力価の免疫グロブリンの投与などを行ったものの、徐々に状態は悪化し死亡した。CMV感染とアミロイドーシスはともに全身性の多彩な症状をきたし、腸管においては血管内腔の狭小化による虚血性変化によって多彩な潰瘍性病変を特徴とする。CMV腸炎とAAアミロイドーシスの合併は稀であり、文献的考察を加えて報告する。