日本消化器内視鏡学会甲信越支部

52.当院における小腸カプセル内視鏡検査の現状

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
河内 裕介、本田 穣、横山 純二、小林 正明、成澤 林太郎
新潟大学医歯学総合研究科 消化器内科学分野
佐藤 祐一、青柳 豊

背景:小腸カプセル内視鏡は、わが国で2007年10月に原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding 以下OGIB)に対して保険適用が認められ、その有用性に関して多数の報告がなされている。目的:当院では、2008年からカプセル内視鏡(Olympus EC-1)を導入し検査を行ってきた。これまでに施行した症例での有用性を検討し、当院における小腸カプセル内視鏡検査の現状を報告する。結果:2008年10月から2010年8月の間、67件のカプセル内視鏡検査を行った。男性39例、女性28例で、平均年齢は62.5歳であった。55例(82%)で全小腸の観察が可能であった。 施行理由として最も多かったのは、OGIBにおける出血源精査で54例(80%)であった。所見として最も多かったのは小血管病変で20例であったが、明らかに活動性出血が認められるものはなかった。他に出血の原因として、NSAID起因性小腸潰瘍、メッケル憩室、血管腫、pyogenic granuloma、GIST、小腸癌などの病変が指摘可能であり、活動性の出血を伴っているものも認められた。カプセル内視鏡が滞留した症例は無かった。8例では全く異常所見を認めなかった。OGIB精査以外の症例として、蛋白漏出性胃腸症、peutz-jeghers syndrome、 follicular lymphoma、小腸カルチノイド等の症例において、病変の精査目的に行われ、いずれも病変の範囲、質的診断に有用であった。考察:小腸カプセル内視鏡は、OGIB症例における出血原の検索において有用であった。また、出血性の病変以外でも有用な所見を得ることが可能であり、今後の小腸検査における応用も期待された。