日本消化器内視鏡学会甲信越支部

51.腸重積を来たしたHenoch-Schonlein紫斑病の1成人例

厚生連長岡中央綜合病院 内科
宗岡 悠介、三浦 隆義、佐藤 明人、福原 康夫、渡辺 庄治、佐藤 知巳、富所 隆、吉川 明
厚生連長岡中央綜合病院 外科
矢田 祐子、黒崎 亮、牧野 成人、河内 保
厚生連長岡中央綜合病院 皮膚科
和泉 純子

【症例】63歳、女性【既往歴】7歳頃ネフローゼ症候群、30歳時に子宮頚管ポリープ切除、38歳時アキレス腱断裂で手術、53歳時より2型糖尿病【家族歴】父:腎癌 母:脳梗塞【現病歴】2010年5月7日より38℃台の発熱と感冒様症状、腹痛・下痢を自覚し、症状は3日間持続した後に一旦改善していた。5月14日より両大腿から膝周囲にかけて大小様々な紫斑が出現。5月17日より下腹部痛と下痢、左肘関節の痛みを自覚し当院救急外来を受診した。腹部CTにて回腸‐結腸型の腸重積と腸間膜のリンパ節腫大を認めたため、同日回盲部切除術を施行した。切除標本の観察では腫瘍性病変は無く、盲腸に一部粘膜壊死を伴う出血・浮腫性変化が認められた。病理組織学的には、Henoch-Schonlein紫斑病(HSP)に特徴的とされるleukocytoclastic vasculitisを認め、紫斑部より施行した皮膚生検でも同様の所見であった。入院時より尿蛋白陽性であったが、その後蛋白尿・血尿ともに著明となり、腎生検にて紫斑病性腎炎に矛盾しない高度のIgA腎症の所見が認められた。また手術後も腹痛が消失せず血便も認められた。以上より最終的に腹部・腎症状を伴ったHSPと診断し、ステロイドの投与を行ったところ諸症状は軽快した。【考察】HSPは主に溶連菌感染などの上気道炎に続発するアレルギー性血管炎に起因する疾患であり小児に好発し、成人では比較的まれである。小児では予後良好で数週間以内に自然治癒するが、成人発症例では腎炎合併例が多く、予後不良例もみられる。小児のHSPに腸重積を合併する頻度は1〜8%とされているが、成人のHSP症例に腸重積を合併したとする報告は少なく、貴重な症例と思われたので報告する。