日本消化器内視鏡学会甲信越支部

50.腹部原発と考えられた肺外小細胞癌の1剖検例

新潟県立中央病院 内科
有賀 諭生、吉川 成一、津端 俊介、平野 正明
新潟県立中央病院 病理診断科
尾矢 剛志、酒井 剛、関谷 政雄

【症例】79才男性【現病歴】他疾患にて当院通院中、1年間で約3kgの体重減少と上腹部痛、食欲低下が出現したため、7月8日に胸腹骨盤CTを施行した。胸部に病変なく、胃体部右側、穹窿部尾側に内部に壊死を伴う巨大腫瘍を認めた。リンパ節転移を伴う点で非典型的だが、栄養血管などから胃原発GIST、多発肝転移、リンパ節転移と考えられ、膵転移も疑われた。7月10日、消化器内科初診。CEA:53.9と上昇し、上皮性悪性腫瘍の可能性も考えられた。7月15日、上部消化管内視鏡検査(EGD)及び超音波内視鏡検査(EUS)施行。EGDで壁外性圧排を認め、EUSで病変認識は可能であったが、胃原発かどうかは同定困難であった。7月22日、精査目的に入院した。【経過】超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)施行および経皮的肝生検施行、組織はいずれも小細胞癌あった。CTで肺病変を認めないことから、腹部原発小細胞癌及び多発肝、リンパ節転移と診断した。小細胞肺癌に準じた化学療法施行の方針とし、8月11日よりCBDCA+VP-16療法 (CBDCA:300mg、day1、VP-16:120mg、day1〜3)を開始した。治療開始後に腫瘍はCTで縮小傾向となり、腫瘍マーカーも減少傾向であった。6クール開始時点の血液検査で腫瘍マーカーが上昇傾向となり、計6クール施行後のCTで原発巣、転移巣ともに増大しPDと判定。翌年1月29日からCPT-11単独療法(CPT-11:140mg、day1、8、15)を開始したが、食欲不振、全身倦怠感が増悪し化学療法継続が困難となった。2月26日、全身苦痛、癌性疼痛の増悪のため入院。徐々に全身状態悪化し4月3日に永眠した。剖検では、胃体上部後壁から穹窿部にかけて腫瘍の露出を認めたが、胃壁と膵臓及び主病巣との癒着はほとんど無く要手剥離は容易であることから、胃の病変は直接浸潤ではなく転移と考えられた。また、膵にも腫瘍浸潤を認めたが、膵原発と考える所見に乏しく、他の臓器も含め原発巣の同定は困難であった。【考察】肺外小細胞癌は食道、胃、大腸、膵、前立腺など様々な臓器で認められているものの、いずれにおいても稀な疾患とされている。肺外小細胞癌を経験し剖検を施行したので報告する。