日本消化器内視鏡学会甲信越支部

46.腹部鈍的外傷により胆管狭窄を来たした一例

信州大学 医学部 消化器内科
小口 貴也、渡邉 貴之、丸山 真弘、米田 傑、丸山 雅史、児玉 亮、村木 崇、浜野 英明、新倉 則和、田中 榮司

症例は10歳代男性。テニスコートを整備中、整地用ローラと鉄柱の間に上腹部を挟まれ受傷した。1週間後より食欲不振、嘔気を認め、近医を受診し、血液検査にて肝胆道系酵素の上昇を認めた。腹部CT・MRIでは中部胆管の狭小化と肝側の胆管拡張を認め、受傷機転から外傷性胆管狭窄症と診断された。入院にて保存的に経過観察していたが、改善を認めないことから、受傷から3週間後、精査加療目的に当院紹介となった。内視鏡的胆管造影では、中部胆管に10mmほどの平滑な狭窄を認め、肝側胆管の拡張を認めた。IDUS上、狭窄部に壁肥厚、腫瘤影は認めず、同部からの生検でも上皮に異形は認めなかった。内視鏡的乳頭括約筋切開術後、胆管プラスチックステントを1本留置した。その後速やかに減黄し、1週間後に4mm Biliary dilationカテーテルにて狭窄部を拡張後、胆管プラスチックステントを2本留置し退院となった。一度、ステントトラブルに伴う急性胆管炎にてステント交換を要したが、胆管ステント留置3ヶ月後に胆管狭窄部の拡張を確認後、ステントを抜去した。以後、再狭窄なく経過している。腹部鈍的外傷により胆管狭窄を来した症例の報告は少なく、貴重な症例と考えられたため報告する。