日本消化器内視鏡学会甲信越支部

45.癌性腹膜炎による小腸イレウスに対し、胃瘻を介して自己拡張型金属ステント2本を留置した膵頭体部癌の1例

国立病院機構 まつもと医療センター 松本病院 消化器科
宮林 秀晴、松田 賢介
国立病院機構 まつもと医療センター 松本病院 内科
松林 潔
国立病院機構 まつもと医療センター 松本病院 外科
北村 宏、小池 祥一郎

症例は72歳・女性。脳梗塞の既往がある。2007年9月脳梗塞の経過観察として施行したFDP-PETで膵頭部に陽性所見を認め当院へ紹介。当院での腹部CT・ERCP・ブラシ細胞診で膵頭部癌と診断。血管造影で脈管浸潤が強く根治的手術非適応と診断。胆管狭窄に対してはcovered metallic stentを留置し、3-6ヶ月に一度程度胆管ステント内洗浄やステント交換で維持していた。また、原発巣に対してはS-1 100mg/day, 2投2休のスケジュールで増大傾向もなくほぼコントロールされていた。2010年4月上旬から食欲不振と嘔吐の回数が増えて入院。入院時施行した腹部CTで胃内に内容物が充満し、胃拡張の状態となっていた。また、十二指腸水平脚とTreiz靱帯近傍肛門側の空腸に狭窄を認め、減圧のための胃管留置の上当院外科に消化管バイパスの目的で転科。開腹所見で小腸を含む腹膜内にほぼ全体に播種が認められ、空腸を引き上げることができずバイパス術は断念。TPNを目的としたポート留置と減圧のため外科的胃瘻を造設した。本人の食事摂取と在宅への希望が強く、胃瘻ボタンへの変更の後リハビリを開始し、胃瘻から細径スコープにて狭窄部位口側にクリップにてマーキングし、十二指腸と空腸の狭窄に対して拡張の後十二指腸ステント(WallFlexTM)を2週に分けて留置した。一時的に5分粥までの食事摂取と外泊可能となり、在宅の準備をしていたが徐々に食事摂取困難・閉塞傾向となり、発熱・胆道系酵素上昇から閉塞性胆管炎を併発。エンドトキシンショックとなり、胆管ステント内洗浄を行ったが回復せず死亡した。胃瘻を介して空腸までのステント留置が可能となったが、ステント閉塞で致命的になる可能性があり、今後定期的な洗浄などを行えば、外科的バイパスが不可狽ネ上部消化管閉塞に対して食事摂取・tube freeの状態で在宅管理となる可能性があると考えられた。