日本消化器内視鏡学会甲信越支部

44.アルコール性慢性膵炎通院中に仮性膵嚢胞の肝穿破を伴う急性増悪を来たし、食道破裂を併発した一例

済生会新潟第二病院 消化器内科
西垣 佑紀、樋口 和男、窪田 智之、石川 達、関 慶一、本間 照、吉田 俊明、上村 朝輝
済生会新潟第二病院 外科
田邊 匡、武者 信行

【症例】50歳代 男性【既往歴】心房中隔欠損にて手術【飲酒歴】3〜5合 連日【現病歴及び経過】2008年1月上腹部痛で発症し、他院でアルコール性膵炎の診断を受けた。その後も飲酒による急性増悪と減酒による症状軽快を繰り返していた。2010年3月左側腹部痛が出現し、CTで膵頭部にわずかに出血を伴う仮性膵嚢胞を認めたが、治療を拒否。また、十二指腸の圧排は認められたが、狭窄症状は認めなかった。2010年7月18日昼頃から数回嘔吐し、嘔吐に伴い上腹部痛が出現し、左側腹部から側胸部へと痛みは広がった。痛みが軽快せず、同日救急搬送された。CTにて仮性嚢胞内出血、尾状葉への仮性嚢胞穿破、十二指腸狭窄、左胸水、左気胸を認めた。胃管挿入、膵炎治療、中心静脈管理とし、疼痛は軽快するも左胸水は増加傾向となった。7月22日外科コンサルトし、左胸腔ドレナージの上、ガストログラフィン食道造影を施行したところ胸腔内への流出が確認された。食道破裂併発と診断。同日緊急手術を施行。経腹的アプローチ、横隔膜経由で左胸腔に至り、下部食道の裂創を縫合閉鎖し、胃底部で被覆した。左胸腔内膿瘍にて発熱が遷延するも、軽快し、7月29日から水分開始。8月23日退院された。【考察】アルコール性慢性膵炎の急性増悪、仮性膵嚢胞の尾状葉への穿破と消化管通過障害にともなう嘔吐発作、食道破裂を併発した一例を経験した。外科との協力のもと救命できたものの消化器内科として外科相談へのステップが遅れた反省点も含め、症例を提示する。