日本消化器内視鏡学会甲信越支部

43.PD後発生した仮生動脈瘤に対して肝動脈血流を完全に温存したまま治療しえた1例

松本協立病院
芹澤 昌史、富田 明彦

症例】症例は73歳男性、平成21年5月20日、下部胆管癌を膵頭十二指腸切除術(以下PD)にて治療されその後自宅療養となっていた。同年6月29日、発熱、腹痛があり来院、腹部単純CT検査を施行したところ腹部に直径4cmほどのlow densityの結節を認め、翌日の造影CTで同結節は動脈相で濃染され仮性動脈瘤であると診断した。PD後の膵液漏のため総肝動脈より分枝していた胃十二指腸動脈処理部に発生したものと考えたが、大きさは直径約5cmとなっており増大傾向を認めたため緊急での治療が必要と判断した。IVRを行うこととなったが、総肝動脈は上腸間膜動脈から分枝する転位動脈であり、また門脈本幹には血栓が認められたため肝動脈血流を温存しながら治療する必要に迫られた。このため治療ではデタッチャブルコイル(3-10)を用い仮性動脈瘤起始部を塞栓した。3日後のCTでは動脈瘤は造影されなくなっており、その後も縮小傾向となった。一年後の平成22年6月の造影CTでも瘤は縮小して血栓化しており、肝動脈血流は保たれていることが確認できた。【考察】PD後発生した仮性動脈瘤については、手術での救命率は低いとされており、IVRでの治療成功例の報告が散見される。その場合、多くは肝動脈本幹を塞栓する方法が選ばれ、他動脈からの側副血行、門脈血流などからの肝血流維持が期待されるが、術後肝梗塞で死亡したという報告も多く認める。本症例は門脈血栓が存在していたため肝動脈血流は温存する必要があり、また上腸間膜動脈から肝動脈が分枝しているためステントなどの各種デバイスのデリバリーも困難である状況が予想された。このため今回の治療法を選択したが、若干の工夫をすることにより有効な方法となりうると考えた。