【症例】患者は70歳代、女性。4年8ヶ月前、胃癌に対し幽門側胃切除術、B-I再建を施行された(pType 0-IIc, sig>por2, pT4a(SE), ly1, v1, pN0, pPM0, pDM0)。術後定期受診の際に肝胆道系酵素の上昇を認め、CTにて下部胆管閉塞が疑われたため、当科紹介となった。内視鏡ではVater乳頭開口部に表面不整な発赤調腫瘤を認め、口側隆起は発赤・腫大し、襞の引きつれを伴っていた。EUSでは乳頭部腫瘤は低エコーを呈し、十二指腸固有筋層は腫瘤により不明瞭化し膵臓側への浸潤が疑われた。乳頭部腫瘤からの生検では上皮下に異型細胞を認めたため、十二指腸固有筋層浸潤を伴う非露出型乳頭部癌を考慮し、残胃+膵頭十二指腸切除術を施行した。固定標本割面では、Vater乳頭部から膵内胆管末端部に白色調腫瘤を認め、固有筋層へ浸潤していた。組織学的に腫瘤は印環細胞癌、低分化型腺癌から成り、上皮に癌は認められなかった。腫瘤部以外では十二指腸粘膜固有層・粘膜下層・固有筋層、膵周囲脂肪組織、膵小葉間組織、胆管周囲に癌が広範囲に散在していた。よって、胃癌の転移と診断した。
【考察】本例では胃癌の転移が特にVater乳頭部および膵内胆管末端部に腫瘤を形成し、胆管閉塞を来したと考えられた。