日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.多彩な膵外病変を認めたIgG4関連硬化性疾患の一例

新潟県立新発田病院 消化器内科
岡 宏充、夏井 正明、坪井 清孝、青木 洋平、松澤 純、杉山 幹也、渡辺 雅史

症例は80歳代男性。近医から早期胃癌に対する内視鏡治療目的に、2010年1月22日当科外来紹介受診。ESD前の評価CTにて、膵体尾部の腫大、腸間膜リンパ節腫大、胸椎右側の軟部陰影、大動脈から総腸骨動脈周囲の軟部陰影、縦隔リンパ節の軽度腫大、両側顎下腺および涙腺の腫大を認めた。また血液検査で、ANA 陽性、IgG、IgG4の著明な上昇および sIL-2Rの高値を認めた。ERCPで膵体尾部主膵菅に著明な狭窄を認め、多彩な膵外病変を伴うIgG4関連硬化性疾患と考えた。しかし、悪性リンパ腫の可能性も完全には否定出来なかったため、4月8日、顎下腺生検を施行。組織学的に悪性リンパ腫を疑う所見はなく、多数の形質細胞の浸潤および線維化を認め、免疫染色でIgG4陽性が確認され、IgG4関連硬化性疾患に伴う顎下腺腫大と診断された。4月12日に、ESDを施行したが、切除検体の病理結果でsm1、ly1であったため、6月14日追加手術を施行。その際、腫大した腸間膜リンパ節も併せて切除した。組織学的にリンパ節には、IgG4陽性の形質細胞の浸潤および線維化を認め、IgG4関連硬化性疾患に伴うリンパ節腫大と考えられた。7月21日からPSL40mg内服を開始し、膵および膵外病変はいずれも縮小し、血液検査でもIgGおよびIgG4、sIL-2Rの低下を認めている。 自己免疫性膵炎は多彩な膵外病変を高頻度に合併することから、IgG4関連硬化性疾患という新しい全身疾患概念の膵病変として考えられるようになってきている。今回我々は、組織学的に顎下腺および腸管膜リンパ節のIgG4陽性形質細胞浸潤を確認出来たIgG4関連硬化性疾患の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。