日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.閉塞性黄疸を契機に発見された慢性期の自己免疫性膵炎と考えられた1例

JA新潟厚生連 糸魚川総合病院 内科
西水 俊准、野々目 和信、金山 雅美、月城 孝志、康山 俊学、樋口 清博

【症例】81歳男性

【主訴】黄疸

【現病歴】平成22年7月下旬より発熱・感冒様症状を認め近医を受診。内服処方され解熱するも、近医にて黄疸およびビリルビン尿を指摘され、閉塞性黄疸疑いにて8月26日当院紹介受診し、同日精査加療目的に入院となる。

【所見】眼球結膜に黄染を認めるが表在リンパ節腫大は認めず、腹部は圧痛は無く腫瘤も触知されない。血液検査ではWBC 9000、CRP 1.87とごく軽度の炎症あり、AST 77、ALT 86、ALP 3061、γGTP 659、T-Bil 2.7、D-Bil 2.2と肝胆道系酵素の上昇を認めた。Amy 33と上昇なく、CEA 2.5、CA19-9 17.4と腫瘍マーカーは基準値内であった。腹部CTでは、膵内のびまん性小石灰化と主膵管の拡張を認めるが、明らかな腫瘤像は認められなかった。総胆管・肝内胆管の拡張があり下部総胆管の狭窄が疑われ、MRCPでは同部のくちばし状狭窄が認められた。ERCPでは主乳頭には異常を認めず、膵管では主膵管拡張と分枝の拡張を認めるが体部主膵管は狭窄を認め、胆管では下部総胆管では乳頭近傍で約2cmの狭窄を認められたが、狭窄部の細胞診は陰性であった。狭窄に対してチューブステントを留置し、肝胆道系酵素の改善を認めている。慢性膵炎の原因としては、アルコール摂取歴無く、胆石も認めず、アルコール性および胆石性は否定的であった。本症例ではIgG4 131、抗核抗体160倍と高値であり、診断基準を満たさないものの、閉塞性黄疸の原因として自己免疫性膵炎の関与が考えられた。

【考察】自己免疫性膵炎は急性期には膵外病変として胆管狭窄やそれに伴う閉塞性黄疸をきたし、経過中に膵萎縮や膵石形成をきたすことが指摘されている。本症例では無症状で経過し慢性期に至った自己免疫膵炎の可能性があり、ここに文献的考察を加えて報告する。