日本消化器内視鏡学会甲信越支部

33.特異な血管構造を呈した胆嚢癌(clear cell adenocarcinoma)の1例

飯田市立病院
池田 義明、前田 知香、代田 智樹、服部 亮、秋田 倫幸、水上 佳樹、平栗 学、堀米 直人、金子 源吾
飯田市立病院 内科
岡庭 信司、中村 喜行、持塚 章芳、武田 龍太郎、白旗 久美子
飯田市立病院 臨床病理科
浅香 志穂、伊藤 信夫
飯田市立病院 放射線診断科
渡邊 智文、岡庭 優子

今回われわれは特異な血管構造を呈し茎部にて漿膜下層浸潤を認めたclear cell adenocarcinomaの1例を経験したので報告する。症例は69歳、女性。主訴は右季肋部痛。心窩部痛、悪心、嘔吐にて近医を受診し、肝機能障害とUSにて胆嚢腫瘤を認めたために精査加療目的に紹介となった。血液検査では、肝胆道系酵素とCA19−9の上昇を認めた。USでは胆嚢内にデブリを伴う巨大な高エコー腫瘤を認め、ドプラにて定常流と拍動流の混在した血流シグナルを認めた。入院時のCTでは付着部から腫瘍内に放射状の不均一なearly enhancementを認め、平衡層にかけて腫瘍表面がenhanceされた。MPR像にて腫瘍血管は胆嚢動脈より栄養され門脈に流入していた。以上の画像所見より、腫瘍は有茎性であり明らかな転移は認めないと診断した。有茎性病変であるが、血管構造などから癌肉腫などの特殊型の胆嚢腫瘍を考慮しD2郭清を伴う拡大胆嚢摘出術を予定した。 腫瘍は約60mmの有茎性病変であり茎部に太い腫瘍血管を認めた。病理組織学的にはグリコーゲンに富む淡明な腫瘍細胞や好酸性顆粒状の胞体を有する腫瘍細胞からなるclear cell adenocarcinomaであり、茎部にて漿膜下層にわずかな浸潤を認めた。最終病理診断は、Gf、75x43x40mm、clear cell adenocarcinoma、深達度ss、ly0、v0、n0、pn0、Stage II(pT2N0M0)、Cur Aであった。特異な血管構造を呈した胆嚢癌( clear cell adenocarcinoma )につき報告した。USによる体位変換、ドプラおよび造影CTのMPR像が、腫瘍の形状評価と腫瘍血管の診断に有用であった。