日本消化器内視鏡学会甲信越支部

32.当科における超音波内視鏡下穿刺吸引生検の成績と今後の課題

信州大学 医学部 消化器内科
金井 圭太、渡邉 貴之、丸山 真弘、伊藤 哲也、米田 傑、丸山 雅史、児玉 亮、村木 崇、浜野 英明、新倉 則和、田中 榮司

【目的】当科で施行した超音波内視鏡下穿刺吸引生検(以下EUS-FNA)において、病変別の検体採取率、正診率などから成績と問題点を検討し、今後の成績向上を図る。【対象】2004年3月から2010年8月に施行し検討可能であったEUS-FNA 83件中。穿刺病変の内訳は、膵病変 35件(通常型膵癌 18件、膵内分泌腫瘍 3件、自己免疫性膵炎 5件、腫瘤形成性膵炎 4件、他腫瘍性病変 5件)、消化管粘膜下腫瘍 16件(食道 2件、胃 12件、直腸 2件)、リンパ節 14件(胸腔内 7件、腹腔内 7件)、その他 18件(縦隔腫瘤 10件など)。【方法】穿刺針はOLYMPUS社製 EZ shot 22G。穿刺は1病変に対し、肉眼的に白色の組織片を採取されるまで2-4回穿刺し、1回の穿刺毎に吸引圧をかけノックダウン方式で10-15ストロークをおこなった。なお、当科では細胞診は提出せずに組織診のみで病理組織学的検討を行った。【結果】1.膵病変:全体では、検体採取率 91%(32/35)・正診率 75%(24/32)。部位別では、頭部は85%(17/20)・64%(11/17)と体尾部 100%(15/15)・87%(13/15)に比し低率の傾向であった。また、通常型膵癌は100%(18/18)・11%(11/18)と非通常型膵癌 82%(14/17)・93%(13/14)に比し、正診率が低率の傾向を示した。穿刺回数においては、3回以上穿刺した症例で1例を除き14例全例で正診可能であった。2.消化管粘膜下腫瘍:全体では、検体採取率75%(12/16)・正診率100%(12/12)。膵同様3回以上穿刺した5例全例で正診可能であった。また、25mm以上の病変では1例を除き5例全例で正診可能であった。3.リンパ節:全体では、86%(12/14)・67%(8/12)。部位、大きさ、穿刺回数には一定の傾向を示さなかった。また、全検査を通して偶発症は認めなかった。【考察】1.膵病変:通常型膵癌において、検体採取率は良好であったが正診率は低く、穿刺回数を増やし採取検体量を多くすることにより正診率の向上を図る必要がある。2.消化管粘膜下腫瘍・リンパ節:確実な病変穿刺を行うための技術の向上や19Gへの穿刺針の変更などの工夫が必要と考えられた。また、今後は全症例において細胞診を併用し、成績の向上を図る。