日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.乳頭小切開併用大バルーン乳頭拡張が有効であった多発総胆管結石の一例

富士吉田市立病院 内科
山崎 貴久、中川 元希、山本 泰漢、高橋 正一郎

【症例】73歳、男性。【既往歴】70歳時に胆石胆嚢炎で腹腔鏡下胆摘を施行。【現病歴】平成22年6月25日頃より全身倦怠感・関節痛があり、7月9日に当科受診。血液検査で炎症反応高値と肝胆道系酵素上昇を認め、精査加療目的で入院となった。【入院後経過】CT検査で総胆管結石及び肝内胆管拡張を認めた。閉塞性黄疸及び胆管炎と診断し、絶食・補液・抗生剤加療及び緊急ENBDを留置したところ、徐々に軽快した。7月16日ENBD造影で上部胆管に12mm径の結石、中下部胆管に10mm径以下の多発結石を認めた。そこで7月21日ERCP施行し、截石を試みた。まず8mm径EPBDで乳頭拡張後、クラッシャーで12mm径結石の破砕を試みたが、うまくつかめずに結石の辺縁を削るのみであった。その後バスケット及びバルーンカテーテルで中下部胆管の結石を截石したが、乳頭通過時の抵抗強く、計1時間以上要し、2個程しか摂れず、ENBDを再留置した。7月26日に再度ENBD造影施行したが、12mm径の結石は大きさ変わらず、多数の結石が遺残していた。腹腔鏡術の既往があるため外科的手術は避けたいこと、大きい結石を伴う多発結石があること、傍乳頭憩室があることから乳頭小切開と大バルーンを用いた截石を試みた。7月28日ERCP施行し、まずguide wireを胆管に留置し、パピロトミーナイフで乳頭を小切開。その後guide wire留置下に大バルーン(12-15mm径)を用いて乳頭を拡張した。大結石を破砕することなく、下部の胆管結石から順にバスケット及びバルーンカテーテルで截石したところ、抵抗なく、35分程で全て截石出来た。【考察】近年、乳頭小切開併用大バルーン乳頭拡張による截石の報告が増えている。本症例のように破砕困難な大きい結石や多発胆管結石では特に効果的と考えられる。若干の文献を加えて報告する。