日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.Sorafenib投与により脳出血を発症した肝細胞癌の2症例

山梨大学第一内科
深澤 佳満、小松 信俊、佐藤 光明、浅川 幸子、進藤 邦明、雨宮 史武、中山 康弘、井上 泰輔、坂本 穣、榎本 信幸

<背景>肝細胞癌においてマルチキナーゼ阻害剤であるSorafenibが保険認可され、分子標的治療薬の新しい時代を迎えようとしている。しかし、本剤には比較的多くの重篤な有害事象の報告があり、投与にあたっては副作用に対する細心の注意が必要である。今回われわれはSorafenib投与により脳出血を起こした2症例を経験したので報告する。<症例1>55歳男性。C型肝硬変。2006年にHCCを発症し、以後RFAやTACEを繰り返していた。経過中、骨転移とPVTTに対してそれぞれ放射線治療を行った。2010年3月に多発肺転移が出現し、肝内の再発病変も増大傾向を認めたため2010年6月からSorafenib 400mg/dayを開始した。投与開始後3週目の血液検査で肝不全傾向を認めたため、Sorafenib を直ちに中止し入院した。Sorafenib中止後13日目に右前頭葉に脳出血を発症し、誤嚥性肺炎を併発して脳出血発症後3日目に永眠した。<症例2>73歳男性。高血圧の既往あり。2006年にC型慢性肝炎に対してIFN治療を行いSVRとなった。2008年にHCCを発症し、以後RFAやTACEを繰り返していた。経過中、下大静脈浸潤に対して放射線療法を行った。2010年1月に肺転移が出現し同年2月からSorafenib 800mg/dayを開始した。投与開始後6ヵ月後に脳出血を発症し他院へ入院した。脳出血発症後18日目に永眠した。<まとめ>HCCに対するSorafenib投与症例の最新の特定使用成績調査では投与中止後1ヵ月以内の追跡症例を含む0.7%(7/777例)に脳出血を認め、7例中2例は脳出血により死亡したと報告されている。今回報告した2症例はともに画像上明らかな脳転移はなかったが、多発肺転移を合併しており、画像的に診断ができない微小な脳転移から出血した可能性も考えられ、文献的考察を含めて報告する。