今回、我々は若年発症した悪性中皮腫の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は30歳代男性。3年前よりリフォーム業に従事した経歴がある。平成22年2月末より上腹部痛を自覚し、近医施行の腹部超音波にて肝腫瘍を指摘され前医を受診した。前医で転移性肝腫瘍を疑い全身CT,FGP-PET施行し、最大49mm大の両葉多発乏血性肝腫瘍,回盲部付近に28mm大の腫瘤,傍大動脈リンパ節から腸間膜リンパ節・外腸骨リンパ節の腫脹を認めた。腹膜・胸膜の肥厚,胸水は認めず、骨盤内腹水を少量認めた。上部・下部内視鏡,カプセル内視鏡を施行したが原発部位は指摘できなかった。肝腫瘍生検でも確定診断がつかず当科に紹介入院した。血清学的にCYFRA 41.9ng/ml,ヒアルロン酸223U/mlと上昇を認めた。肝腫瘍生検にて上皮様に配列する粘液産生腫瘍を認め、免疫染色ではVimentin陽性, Mesotherin陽性,Calretinin A陽性, CAM5.2陽性,melanoma marker陰性,CEA陰性であり、悪性中皮腫と診断した。根治手術不能であり化学療法の方針となった。悪性胸膜中皮腫の化学療法に準じて1st lineとしてペメトレキセド+シスプラチンを施行した。1コース施行後のCTで腫瘍は17.6%縮小し、SDであったが、2コース後にはPDとなった。2nd lineとしてゲムシタビン+シスプラチンの化学療法を開始したが、DICをきたし化学療法継続不狽ニなり、その後に脳梗塞を合併し死亡した。 本症例は30歳代と若年発症であり、剖検精査中であるが、悪性中皮腫の好発部位である胸膜・腹膜・心膜・精巣漿膜に異常所見を認めず、原発部位として虫垂漿膜もしくは肝臓被膜の可柏ォが考えられた非常に稀なケースであった。