日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.画像診断に苦慮した細胆管細胞癌の1例

山梨大学 医学部 第一内科
金平 さやか、佐藤 光明、久野 徹、深澤 佳満、小松 信俊、浅川 幸子、進藤 邦明、雨宮 史武、中山 康弘、井上 泰輔、前川 伸哉、坂本 穣、榎本 信幸
山梨大学 医学部 第一外科
雨宮 秀武、松田 政徳、藤井 秀樹
山梨大学 医学部 人間病理学
山根 徹、加藤 良平

【背景】細胆管細胞癌(CoCC)は原発性肝癌の1%以下で稀な疾患であり、画像診断は確立していない。【症例】50歳女性。【現病歴】検診の腹部超音波検査で肝S4に40mm大の腫瘤を認め当科紹介された。【検査所見】Alb:4.2 g/dl、AST:17 IU/L、ALT:17 IU/L、T-Bil:0.6 mg/dl、PT%:108.2 %、ICG R15:12.9%、CEA:5.3 ng/ml、CA19-9:0.53U/ml、AFP:1.5 ng/ml、PIVKA-II:15 mAU/ml、HBs-Ag(-)、HCV-Ab(-)【画像所見】腹部造影CTでは肝S4に分葉状の動脈相で辺縁主体に不均一に濃染し、遅延相で濃染が持続する48×33mmの腫瘤として指摘された。また、肝門部には最大13mmまでの腫大リンパ節を数個認めた。Gd-EOB-造影MRIではT1でlow intensity、脂肪抑制T2で辺縁high、内部lowであり、肝細胞相はlowでDWIはhighであった。Sonazoid造影超音波ではBモードでhypoechoicであったがP4が結節内部に入り込む像を認めた。【臨床経過】画像所見からは肝細胞癌(HCC)としても肝内胆管癌(CCC)としても非典型的であり、細胆管細胞癌、混合型肝癌、炎症性偽腫瘍などが考えられたが、確定診断ができず悪性腫瘍が否定し得えないため切除の方針となった。腫大リンパ節は術中迅速検査の結果、炎症細胞浸潤を認めたが悪性所見は認めなかった。このため拡大左葉切除術が施行された。切除標本は50mm大の灰白色腫瘤で被膜や隔壁を伴わず、周囲に軽度の浸潤を認めた。腫瘍細胞は細胆管構造を模倣する腺癌で、腫瘍辺縁は肝細胞索に直接連続し腫瘍内にはグリソン鞘が取り込まれ遺残を認めた。線維化した鞘内には腫瘍が浸潤し一部には血管内浸潤も伴っていた。免疫染色上cytokeratin(CK)7陽性、CK19陽性、ヘパトサイト陰性、グリピカン陰性であり最終的にCoCCと診断された。【結語】CoCCは比較的稀な疾患であり術前には確定診断し得なかった。本例のように非典型的な画像所見を呈する場合にはCoCCを考慮する必要があり、示唆に富む症例と考え、文献的考察を踏まえ報告する。