日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.若年男性に発症した十二指腸乳頭部低分化神経内分泌細胞癌の1例

新潟大学医歯学総合病院 臨床研修センター、新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
湊 圭太郎
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
山田 一樹、瀧澤 一休、土屋 淳紀、冨樫 忠之、河内 裕介、塩路 和彦、須田 剛士、青柳 豊
新潟大学医歯学総合病院 病理部
梅津 哉

症例は20歳代の男性。2010年5月ごろより夜間の臍周囲鈍痛を自覚し近医を受診、肝胆道系酵素とアミラーゼの上昇を認め当科紹介となった。 腹部CTにて総胆管の拡張、膵頭部周囲に多発するリンパ節腫大、傍大動脈リンパ節腫大を認めた。ERCP施行時、十二指腸主乳頭部に膵・胆管開口部を取り囲むように耳たぶ状の周堤を伴う潰瘍性病変が認められた。膵・胆管造影では軽度の胆管拡張を認めるのみであったが、腫瘍により胆汁うっ滞、膵液の流出障害を来していると考えEBD、EPSを留置した。 内視鏡的には年齢も考慮し悪性リンパ腫を第一に考えたが、同部の生検では低分化神経内分泌細胞癌と診断され、その後測定したNES、ProGRPの上昇も認めた。PET-CTを含めた全身検索にて他に原発となりうる病変はなく、十二指腸主乳頭部原発の低分化神経内分泌細胞癌と診断した。 広範なリンパ節転移を伴い治癒切除は不可能と判断し、肺小細胞癌に準じてCDDP+CPT-11による全身化学療法を行う方針とした。 6月17日より1コース目(CDDP 90mg/body+CPT-11 100mg/body)を開始。CTにて膵頭部周囲のリンパ節腫大は縮小していたが、傍大動脈リンパ節腫大の縮小は見られなかった。抗癌剤自体は奏功しておりdrug deliveryの問題であると考えられたため動注療法を行う方針となった。7月15日血管造影下に大動脈カテーテルを留置し前回と同様のレジメンを動注にて施行した。7月22日のCTでは傍大動脈リンパ節腫大にも軽度縮小を認め効果ありと判断。2コース終了後、動注のためのリザーバーを8月17日に留置し、3コース目の治療を現在施行中である。 十二指腸主乳頭部の低分化神経内分泌細胞癌は非常にまれであり、動注での治療を施行した報告もなく、非常に貴重な症例と考え報告する。