患者:70歳代, 男性.主訴:食後の心窩部痛.現病歴:食後の心窩部痛の原因精査のため上部消化管内視鏡検査を施行した.上部消化管内視鏡検査所見:胃体下部大彎後壁に表層に発赤粘膜面を伴う15mm大の粘膜下腫瘍様病変を認め, 発赤粘膜面には腫大した腺管構造を認めるものの明らかな不整構造は確認できなかった. NBI拡大内視鏡検査所見:NBI拡大観察においては絨毛様構造の不整や融合を認め,また, 表面構造が不明瞭化した部分ではネットワークを形成しない走行不整を伴う異常血管を認めた.超音波内視鏡所見:第3層を主体に濾胞構造様の低エコー所見を認めた.臨床経過:生検組織にてリンパ球の高度な浸潤を背景に, 腫大した核をもつ異型上皮細胞様の小塊が粘膜固有層に散在性に分布して認められ, 低分化型腺癌とMALTリンパ腫の鑑別に難渋した。 しかし、異型細胞が認められる部位に一致してAE1/AE3が陽性かつEBV encoded small RNA in situ hybridization(EBER-ISH)陽性所見を認め, EBV関連胃癌(por)と診断した. EUS所見から腫瘍細胞は粘膜下層に存在する濾胞様構造内への浸潤が疑われ腹腔鏡下幽門側胃切除術の方針とした.摘出標本:胃体下部後壁に粘膜下腫瘍様の低い隆起性病変が存在し, 粘膜の変化は不明瞭だが, 割面にて粘膜下に境界明瞭な白色腫瘤の形成を認めた. 腫瘤の長径は約15mmであった.病理組織所見:腸上皮化生を伴った慢性胃炎を背景にして, N/C比が高く核小体明瞭な腫瘍細胞がレース状あるいは索状に配列して増殖していた. 間質にはリンパ濾胞を形成したリンパ球の浸潤を伴っていた. 病変の主座は粘膜下に存在したが, 一部に粘膜内病変を認めた. 切除断端は陰性で, 明らかなリンパ節転移は認めなかった. 腫瘍細胞は上皮系マーカーのAE1/AE3が陽性であり, 同時にEBV-ISH陽性所見を認めた. 最終診断はCarcinoma with lymphoid stroma(旧分類por1), SM2, ly0, v2, pN0であった. まとめ:今回我々は内視鏡生検材料にて腫瘍細胞のAE1/AE3とEBER-ISH陽性の所見を手がかりに、手術前にEBV関連胃癌と診断した1例を経験したので若干の考察を含め報告する.