日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18.自己免疫性肝炎とA型胃炎の患者に発生した、隆起型MALTlymphomaの一例

長野市民病院 消化器内科
関 亜矢子、長谷部 修、原 悦雄、越知 泰英、立岩 伸之、須澤 兼一、多田井 敏治
長野市民病院 病理診断科
保坂 典子

症例は60歳代女性。自己免疫性肝炎による肝硬変と診断され、近医で加療されていた。骨折の治療目的で整形外科に紹介されたが、見当識障害とフラッピングがありNH3163と高値を認めたため、肝性脳症の加療目的で当科に紹介された。子宮頸癌の手術歴あり、飲酒歴無し。血液検査所見はWBC5130、Hb9.2、Plt5.7x104、TP6.9、Alb2.5、ZTT21.1、TTT20.0, T-Bil 0.6、AST43、ALT21、LD237、ALP911、γGTP74、BUN37、Cre0.6、CRP0.25、PT% 80、IgG1924、IgA1163、IgM50、ANA320倍、AMA陰性、抗LKM-1抗体陰性、HBs抗原陰性、抗HCV抗体陰性であった。消化管出血による高NH3血症が疑われEGDを行ったところ、F3、RC++の食道静脈瘤と、前庭部後壁に発赤調の有茎性ポリープを認め、その周囲にはびらんを伴う発赤領域が認められた。ポリープは易出血性で、基部からの生検はGroup1であった。食道静脈瘤に2回EVLを施行後、過形成性ポリープと診断し胃ポリペクトミーを施行した。病理組織診断はMALT lymphomaであった。また、ポリープ周囲の発赤部の生検でも、MALT lymphomaが確認された。生検標本の免疫染色と血清IgG抗体検査では、H.pylori感染は認められなかった。また、体下部からの生検でendocrine cell nestが確認され、体部領域に強い萎縮を認めたため、抗胃壁細胞抗体と抗内因子抗体は陰性であったが、血中ガストリン濃度1400と高値であり、A型胃炎と診断した。自己免疫性肝炎とA型胃炎の患者に発生した、H.pylori陰性の隆起型MALT lymphomaは今まで報告が無く、貴重な症例と考えられたため報告する。