日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.食道癌と胃癌の同時性重複癌の1例

長野県立 木曽病院 外科
秋田 眞吾、小山 佳紀、河西 秀、久米田 茂喜
長野県立木曽病院 内科
岡村 卓磨、福澤 慎哉、北原 桂、飯島 章博
信州大学 医学部 病理組織学教室
下条 久志

症例は83歳、男性。2009年1月食事の際のつかえ感を主訴に来院された。精査の結果、胸部中部食道に1型の扁平上皮癌cT3cN0cM0を指摘。年齢や本人・家族の希望を考慮し、放射線治療(60-66Gy33回)が選択された。放射線治療により、腫瘍は一旦は縮小したものの1年2ヶ月後の上部消化管検査にて胸部中部食道に1型の再発腫瘍と胃体下部前壁にIIcの腺癌病変が認められ、手術目的に当科に紹介となった。食道癌放射線治療後再発(cT3cN0cM0)及び早期胃癌の同時性重複癌の診断で、食道癌salvage手術及び胃部分切除を施行した。病理組織検査では、食道病変は放射線療法後のため分化型は明らかではないが、組織型は扁平上皮癌であり、胃の病変は高分化型腺癌であった。術後経過は順調で特に術後合併症を認めず経過し、現在外来経過観察中である。集学的治療法の進歩により食道癌と多臓器重複癌の割合は近年増加傾向にあり、食道癌との合併で多い癌では頭頚部領域癌と胃癌であるとされる。今後、さらに重複癌症例は増加することが予想され、日常診療において重複癌の存在を念頭におくべきであると思われた。今回、我々は食道癌放射線治療後再発と胃癌の同時性重複癌に対し手術治療を施行した1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。