日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15.胃全摘術後の輸入脚症候群に対して内視鏡的バルーン拡張術が著効した一例

須坂病院 総合診療部
多田 明良
須坂病院 内科
赤松 泰次、張 淑美、坂口 みほ、松澤 正浩、下平 和久
須坂病院 外科 
西田 孝宏、和城 光庸、森廣 雅人、熊谷 信平

81歳の男性。2010年1月、胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術を受けた(R-Y再建法)。同年3月、腹痛、嘔吐が出現し、腹部CT検査にて輸入脚の拡張を認め、輸入脚症候群が疑われた。症状が軽度のため対症療法にて経過をみていたが、同年6月再び症状が増悪し、精査加療目的に当院入院となった。

血液生化学検査にて肝胆道系酵素の上昇を認め、腹部CT検査にて輸入脚の著明な拡張および腹水の貯留を認めた。上部消化管内視鏡検査を施行したところ、輸入脚吻合部にピンホール様の狭窄を認めた。引き続き吻合部に対して内視鏡的バルーン拡張術を行ったところ、輸入脚より大量の腸液流出がみられた。その後症状は劇的に改善し、第15病日に退院した。3ヶ月経過した現在、再発は認めていない。

外科手術を要することも少なくない輸入脚症候群に対して、本例は内視鏡的バルーン拡張術が著効したと考えられ、文献的考察を加えて報告する。