日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.強皮症に合併した食道扁平上皮癌の1例

長野県立木曽病院 外科
秋田 眞吾、小山 佳紀、河西 秀、久米田 茂喜
長野県立木曽病院 内科
岡村 卓磨、福澤 慎哉、北原 桂、飯島 章博
信州大学 病理組織学教室
下条 久志

症例は57歳,男性.17年前より強皮症の既往があり、当院内科に通院治療中であった。上部消化管スクリーニングのため、上部消化管内視鏡検査を施行された。下部食道に約1/5周の2型食道癌が指摘された。cT3cN0cM0を術前診断として、右開胸食道部分切除、胃管胸腔内再建、2領域リンパ節郭清を施行した。病理組織検査ではmoderately to poorly differentiated squamous cell carcinoma,pT3pN1sM0であった。術後経過は順調で特に合併症を認めず経過し、現在外来経過観察中である。一般的に、強皮症は、皮膚の硬化、Raynaud現象を主症状とする膠原病であり、組織の線維化と血管内皮の障害・増殖とそれに伴う循環障害が基本病態とされ、消化管における病変としては固有筋層の線維化が特徴的な所見とされている。膠原病と悪性腫瘍の合併はしばしば認められ、強皮症においても悪性腫瘍を合併した報告がなされている。本邦における強皮症の悪性腫瘍の発生部位は肺、胃、乳腺などに多いとされ、また悪性腫瘍が合併する頻度は、一般健常人の罹患率に比し有意に高いとされる。強皮症における食道癌の組織型の多くはBarrett食道炎を介した腺癌とされ、扁平上皮癌の報告は少なく、本症例は稀であると思われた。今回、我々は強皮症に合併した食道扁平上皮癌の一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。