日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.経過観察中に形態の変化を認めた食道血管腫の1例

山梨大学 医学部 第一内科
久野  徹、花輪 充彦、大高 雅彦、山口 達也、植竹 智義、大塚 博之、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 人体病理
中澤 匡男

症例は64歳、女性。2008年12月胸やけの精査として近医で行われた上部消化管内視鏡検査において、中部食道に腫瘤を認め、精査のため紹介となった。2009年2月当院外来で行った内視鏡検査では、中部食道に5mm大の亜有茎性病変を認め、粘膜面は平滑で、周囲食道粘膜と比較して発赤し、表面に少数の血管の走行が確認された。超音波内視鏡では均一な高エコー腫瘤として描出され、腫瘤の存在の主座は粘膜内であるが、粘膜下層との境界は不明瞭であった。通常観察における赤紫の色調から血管性病変を否定できなかったため、敢えて生検は行わなかった。内視鏡所見、超音波内視鏡所見からも確定診断は困難であったため経過観察することとした。2010年3月の内視鏡検査では、腫瘍は亜有茎性で8mmに増大し、頂部は分葉傾向を示し、一部に白苔の付着を認めた。診断確定と治療の目的で、2010年5月入院し、内視鏡的粘膜切除を行った。病理組織検査では、上皮下に毛細血管の増殖がみられ、びらんと間質に出血を伴っており、capillary hemangiomaと診断した。また報告では、pyogenic granulomaとの併存が報告されており、本例でも一部に同様の所見を認めた。食道の良性腫瘍の頻度は悪性腫瘍に比べて稀であり、さらに血管腫は良性腫瘍の2-6%に過ぎないと報告されている。本症例は、経過観察中の比較的短期間に形態の変化を認め、その内視鏡所見、超音波所見は特徴的であり、文献的考察を加えて報告する。