日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.急性閉塞性化膿性胆管炎経過中に発症した急性壊死性食道炎の1例

飯田市立病院消化器内科
小林 惇一、中村 喜行、持塚 章芳、岡庭 信司、白旗 久美子、武田 龍太郎

急性壊死性食道炎は内視鏡的に特徴的な食道粘膜の黒色調変化をきたし黒色食道とも呼ばれる稀な疾患である。今回、急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)経過中に発症し、治癒経過を追えた症例を経験したので報告する。症例は90歳代女性。既往歴に糖尿病、腎疾患なし。発熱で他院に入院し抗生剤治療を受けていたが解熱傾向なく、肝胆道系酵素異常、白血球増多、血小板減少がみられ当院へ紹介となった。肝外胆管結石に伴うAOSC、DICの診断で転院第1病日にEBD施行。症状、検査値の改善があり第7病日に切石術施行したが、第10病日に発熱と胆道系酵素上昇を認めて再度EBDを施行した。その際に中部から下部食道に食道胃接合部で明瞭に境界される黒色の全周性のビラン、潰瘍を、胃十二指腸に黒色の潰瘍底を有する多発潰瘍を認め、急性壊疽性食道炎および急性胃十二指腸粘膜病変と診断した。プロトンポンプ阻害剤、高カロリー輸液を行った。胆管炎は再度のEBD後、改善が認められた。第18病日、ビラン、潰瘍は改善傾向を示し、黒色調の所見は乏しくなったが切歯列より27cmに全周性の狭窄が生じ、スコープ通過が困難となった。第21病日、細径超音波プローブによる検索で粘膜下層の肥厚を認めた。狭窄範囲は約3cmであり、内視鏡的バルーン拡張を行い、胃管を挿入し経管栄養を開始した。第33病日、ビラン、潰瘍は再生粘膜に被われていたが易出血性であった。第40病日に再度バルーン拡張を行い、第70病日退院となった。急性壊死性食道炎は虚血が関与し糖尿病、腎不全などの基礎疾患を有する患者に発生する場合が多いとされているが、本症例では重症感染に伴い発症したと思われた。