日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.リンパ節転移を認めた深達度MMのBarrett食道癌の一例

信州大学 医学部
竹内 大輔、小出 直彦、芳澤 淳一、鈴木 彰、関野 康、石曽根 聡、宮川 眞一
信州大学消化器内科
長屋 匡信
信州大学臨床病理部
浅野 功治
飯田市立病院
金子 靖典

症例は53歳女性,数年来胸やけを自覚していた.健診での上部消化管内視鏡検査で,食道胃接合部に隆起性病変を指摘された.血液検査ではCEA,CA19-9はともに基準値範囲内であった.上部消化管造影検査では食道胃接合部に長径15mmの境界明瞭な隆起性病変を認めた.上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部に0-I型の隆起性病変を認めた.病変周囲の円柱上皮下に食道柵状血管網を認め,食道裂孔ヘルニアを伴っていた.腫瘍よりの生検ではadenocarcinoma(tub1>tub2)であった.超音波内視鏡検査では一部で第3層の断裂を認め,sm浸潤が疑われた.CTにて噴門右側に直径7mmのリンパ節を認めたが,肝転移や縦隔リンパ節の腫大を認めなかった.PET検査では食道胃接合部の病変に一致してSUVmax 3.8の集積を認めたが,リンパ節転移や遠隔転移を疑う所見を認めなかった.以上より食道胃接合部癌(Siewert type II,cT1b, cN0, cM0, cStage I)の診断にて,下部食道噴門側胃切除,縦隔内食道胃管吻合術を施行した.病理組織診では,Ae, 15 x 15 mm, 0-I型, adenocarcinoma(tub1>tub2〜por) in the Barrett's esophagus, pT1a-MM(deep), INFb, ly1, v0, pIM0, pPM0, pDM0, pRM0, multiple ca(-), pN1(No.3a), cM0, fStage I, Cur Aであった.病変部において粘膜筋板の二重化を認め,Barrett食道癌と診断された.郭清されたNo.3aリンパ節1個に転移を認めた.近年,Barrett食道癌に対する注目は高く,表在癌の発見も増加しているとされる.食道癌診断・治療ガイドラインではMM-SM1の扁平上皮癌におけるリンパ節転移の頻度は約10%といわれているが,Barrett食道癌での検討は少なく,文献的考案を加えて報告する.