日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.食道basaloidの2例

諏訪赤十字病院 消化器科
荻原 淳、進士 明宏、小松 健一、小松 通治、太田 裕志、武川 建二、山村 伸吉、小口 寿夫
諏訪赤十字病院 外科
島田 宏、代田 廣志
諏訪赤十字病院 病理部
中村 智次

食道悪性腫瘍の中で、類基底細胞癌(basaloid)は、比較的稀とされてきたが、近年報告例が増えている。今回過去2年に2例の食道basaloidを経験したので過去の報告との比較を含めて報告する。症例1:60歳、男性。主訴は食道つかえ感。既往歴に舌癌手術歴あり。下部食道に粘膜下腫瘍の性質をもち、一部にヨード不染を伴う病変を認め、生検でbasaloidと診断された。食道亜全摘術を受けた。上皮内進展が広範囲で、長径10cm, T1b(SM3), ly3, v1, pN2, M0, Stage 2, Cur Bの所見であった。術後UFTによる補助化学療法を行ったが、術後8ヵ月で両側肺転移が見られた。症例2:74歳、男性。前年に胃体上部の粘膜切除を受けており、その1年後の経過観察目的でEGDを受け、中部食道に粘膜下腫瘍の性質を持ち、一部にヨード不染を示す病変を認め、生検でbasaloidと診断された。全身検索で切除可能と判断し、食道亜全摘術を施行された。長径18mm, pT1b(SM3), ly1, v0, pN2, M0, Stage 2, Cur Aの所見であった。なお、合併切除した胆嚢には上皮内癌を認めた。術後3ヵ月となるが今のところ無再発である。過去の報告およびreviewと同様に粘膜下腫瘍様の形態をとり、頂部に非癌粘膜上皮を被覆され平滑な部分を有し、脈管浸潤も認めていた。Stage 3,4では扁平上皮癌に比べ予後不良といわれているが、Stage 0〜2では扁平上皮癌と変わらないとされ、平滑な粘膜下腫瘍様の隆起を食道に認めた場合、本症を念頭において積極的な生検を心がけるべきだが、生検での正診率は低率といわれており、形態的に強く本症を疑うことが重要と考えられる。