日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.消化管病変を観察しえたSchoenlein-Henoch紫斑病の1例

長岡赤十字病院 消化器内科
永野 敦嗣、三浦 智史、中村 潤一郎、山田 聡志、三浦 努、柳 雅彦
魚沼病院 内科
高橋 達

 Schoenlein-Henoch紫斑病は小児に好発するアレルギー機序による全身性の細血管炎である。白血球破壊性血管炎を来し、紫斑や関節症状、消化器症状や紫斑病性腎炎などを来す。今回、腹痛と血便を主訴に来院し消化管病変を内視鏡的に観察しえた症例を経験したので報告する。

 症例は16歳男性。X年4月に扁桃腺炎に罹患。同年5月より下肢の紫斑が出現し近医より抗アレルギー薬にて加療された。6月17日に腹痛、下痢が出現し、6月19日に腹痛が増悪し鮮血の血便を伴うようになり救急外来を受診した。上下肢に典型的な紫斑と下腹部に著明な圧痛を認めたが反跳痛は認めなかった。CTでは上行結腸から横行結腸にかけて強い炎症所見を認めたがfree airは認めなかった。血液検査ではXIII因子63%と低下を認めた。Schoenlein-Henoch紫斑病を強く疑い入院とした。入院後に腹痛と血便は増悪したが、ステロイドやXIII因子製剤の使用や皮膚生検は拒否されたため、絶飲食、輸液、カルバゾクロム、トラネキサム酸にて加療した。その後、血便は徐々に減少し、腹痛も改善傾向となった。上部・下部消化管内視鏡検査では、十二指腸水平脚に発赤粘膜が散見され、全大腸に発赤粘膜が散在し横行結腸には特に強い炎症所見を認め一部潰瘍形成を思わせる所見であった。生検結果で十二指腸粘膜に白血球破壊性血管炎を認めた。第11病日より経口摂取を再開したが、腹部症状の再燃は認めず、第17病日に退院した。6ヶ月後に下部消化管内視鏡検査を再検したところ、前述の病変は消失していた。今回の発症の誘因は扁桃腺炎とも考えられ扁桃誘発試験と扁桃摘出術も勧めたが拒否された。全経過において尿所見の異常は認められず、現在は再燃なく経過中である。

 Schoenlein-Henoch紫斑病は時に強い消化管症状を呈することがあり、ステロイドやXIII因子製剤の有用性が報告されている。時に消化管症状が紫斑の出現よりも先行する例も認められており注意を要する。内視鏡検査の施行時に血管炎の所見を認識しておくことは診断に際して非常に有用と思われるため、本症例にて観察された所見は重要と考えられ報告する。