症例は40代男性,慢性腎不全のため血液維持透析中.
2009年5月,心窩部不快感精査のため行われた腹部CTにて,主膵管拡張を指摘され,精査を目的として当科を紹介された.
各種画像診断で,体部主膵管内に20mm大の腫瘤を認め,腫瘤頭側の主膵管は軽度拡張し,尾側の主膵管は著明に拡張していた.ERCPでは,Vater乳頭膵管開口部には異常なく,体部主膵管に蟹爪様の辺縁を有する陰影欠損を認め,主膵管内に腫瘍栓様の発育をきたした病変と診断した.
生検組織診断では腺腫だったが,腫瘤の形態,大きさなどから悪性の可能性があると診断し,2009年9月当院外科にて脾臓合併膵体尾部切除を行った.
病変は30mm大,割面は白色充実性で,尾側で広範囲に導管に付着していた.腫瘍細胞は好酸性の胞体と偏在した核を有し,リボン状・索状に増殖しており,一部では管腔形成を認めた.特殊染色を加え検討し,Well differentiated endocrine tumor of the pancreas, uncertain behaviourと診断された.術後無再発経過観察中である.
膵管内に腫瘍栓状の発育をきたす病変として,内分泌細胞腫瘍の報告は比較的稀であり,文献学的考察を加え報告する.