日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.胆嚢腺筋腫内癌の1例

山梨大学 医学部 第1内科
門倉 信、高野 伸一、深澤 佳満、高橋 英、深澤 光晴、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 第1外科
細村 直弘、川井田博充、河野 寛、板倉 淳、藤井 秀樹

症例は 76歳女性。慢性C型肝炎および冠攣縮性狭心症にて通院中の病院で以前より胆嚢ポリープ指摘されていたが増大傾向を示したため当院紹介受診となった。血液検査所見では腫瘍マーカー含め有意な所見なし。腹部超音波では胆嚢内に 13mm 大の結石を認め胆嚢壁は全周性に肥厚しており,頚部に18mm 大の腫瘤を認めた。同部位の EUS 観察では,腫瘤は広茎性で付着部付近では丈の低い隆起が広がっておりSS以深のI+IIa型の胆嚢癌が疑われた。ERCP 施行しブラシ細胞診および ENGBD留置による洗浄細胞診を行うもClass IIまでの検出であった。CT / MRI では漿膜外浸潤・リンパ節転移・他臓器転移を疑う所見を認めなかった。胆嚢癌,T1 (S0,Hinf- ,Binf- ,PV-,A-), N0, H0,P0, M0,StageIと術前診断し,開腹胆嚢摘出術を施行した。病理所見では胆嚢内に 19mm 大の乳頭膨隆型の腫瘍を認め,腫瘍の先端部では小腺管構造を呈する異型腺管が密に増加し,p53 陽性像を認め MIB-1 index は 15% と高分化な管状腺癌の像であった。続く茎部では異型は乏しく p53 陽性像や MIB-1 index も減弱しており low grade なadenoma の像を呈していた。最終診断は Well differenciated adenocarcinoma (tub1) with adenoma component. pT1, m, s0, binf0, pv0,a0, ly0, v0, n (-) であり術後経過に問題なく退院となった。胆嚢腺腫内癌は比較的まれであり,病理学的考察および若干の文献的考察を加えて報告する。