日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.放射線化学療法にて完全寛解したH. pylori 陰性十二指腸MALTリンパ腫 の1例

地方独立行政法人長野県立病院機構 須坂病院 消化器内科、信州大学 医学部 消化器内科
張 淑美
地方独立行政法人長野県立病院機構 須坂病院 消化器内科
赤松 泰次、下平 和久、松沢 正浩、坂口 みほ
信州大学 医学部 消化器内科
菅 智明、新倉 則和、田中 栄司
長野市民病院 消化器内科
原 悦雄

症例は60歳代の男性。上部消化管内視鏡検査(EGD)で十二指腸球部から球後部にかけて粘膜の肥厚を伴う襞集中像を認めたが、鉗子生検では異常を指摘されなかった。内視鏡所見よりリンパ腫を疑われて信州大学消化器内科を紹介され、EGDを再検したところ同病変の超音波内視鏡所見(EUS)で第2層の著明な肥厚がみられ、第4層は保たれていた。ボーリング生検を行ったところ、小型異型リンパ球の著明な浸潤を認め、一部にやや大型の異型リンパ球が観察された。免疫組織染色の結果、わずかにhigh grade成分を含むMALTリンパ腫と診断された。各種画像診断と骨髄検査では他部位への浸潤は認めず、Lugano国際分類stageIと考えられた。H. pylori感染は認めなった。生検標本でhigh grade成分が含まれていたこと、EUSで十二指腸壁表層に限局していたこと、H. pylori感染を認めなかったことより、治療はリツキシマブを併用したCHOP療法(R-CHOP)3クールと30Gy放射線療法を行うこととした。R-CHOP3クール施行後にEGDを行ったところ、十二指腸粘膜の肥厚は消失し、生検でも異型リンパ球の残存は認めなかった。さらに同部位を中心に30Gy放射線療法を行い、経過観察中である。