日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.内視鏡鏡的に切除した十二指腸カルチノイド腫瘍の1例

山梨県立中央病院消化器内科
廣瀬純穂、小嶋裕一郎、岩本史光、津久井雄也、吉田貴史、細田健司、鈴木洋司、細田和彦、廣瀬雄一、望月 仁、小俣政男
山梨県立中央病院病理
小山敏雄

症例: 70歳代、男性。主訴:特記事項なし。現病歴:1985年より潰瘍性大腸炎で他院で経過観察中、スクリーニング目的で実施した上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に隆起性病変を認め生検にてカルチノイド腫瘍と診断され、2008年12月当院に紹介となった。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸球部前面にやや黄色調を呈する表面に血管網が観察される粘膜下腫瘍 を呈していた。超音波内視鏡検査では病変は第III層までにとどまり4 mmの低エコー腫瘤像であった。腹部CTでは異常所見は認めなかった。以上より粘膜下層までの4 mm大のカルチノイド腫瘍と診断した。十二指腸病変であり、穿孔の可能性が高い旨を説明の上、2009年3月内視鏡的に周辺切開を行いsnaringにて病変を一括切除し偶発症無く退院となった。切除標本病理所見では、病変は粘膜下層まででカルチノイド腫瘍の像であった。切除断端にはカルチノイド腫瘍は認めなかった。

十二指腸カルチノイド腫瘍の内視鏡治療は、粘膜下腫瘍でありまた、十二指腸にブルンネル腺があることから、剥離が困難であり内視鏡治療においては、穿孔の頻度が比較的高い。今回我々は十二指腸カルチノイド腫瘍に対して内視鏡的切除を実施したので文献的考察を加えて報告する。