日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.十二指腸乳頭部口側隆起に発生した十二指腸腺腫に対しpartial papillectomy を施行した一例

長野市民病院 消化器内科
関 亜矢子、長谷部 修、原 悦雄、越知 泰英、立岩 伸之、須澤 兼一、彦坂 吉興、多田井 敏治
長野市民病院 病理診断科
保坂 典子
山口医院
山口 孝太郎

50代女性。高脂血症にて前医で加療中であった。定期検査のEGDで十二指腸乳頭部口側隆起に小陥凹性病変を認め、2回の生検でGroupIII、GroupV(tub1)であったため、当科へ紹介された。術前ERCPでは口側隆起に約7mmの淡発赤調の陥凹性病変を認め、開口部には進展を認めなかった。ERPでは異常なく、ERCは不成功であった。口側隆起に発生した0IIc、深達度mの早期十二指腸癌と診断し、平成21年11月10日乳頭開口部を温存したpartial papillectomyを施行。細径スネアを用い粘膜下局注はせず、口側隆起のみスネアリングし切開波で切除した。切除後にoozingを認め、ヒートプローブにて止血し得た。その後5Fr. 3cmの膵管ステントを留置し終了した。7日後のERCPでは切除面に胆管口が露出し、胆管・膵管が分離開口となっていた。病理組織学的には径5mmの腺腫>高分化型腺癌で断端陰性であった。十二指腸乳頭部口側隆起に発生した十二指腸腫瘍に対する切除方法として、開口部を含めたpapillectomyを施行するべきか、開口部を温存したpartial papillectomyを施行するべきか定説がない。本例では切除後に膵管ステントを留置することで安全にpartial papillectomyを施行し得たので報告する。