日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.EMRにて切除した十二指腸癌の1例

山梨県立中央病院消化器内科
津久井雄也、小嶋裕一郎、岩本史光、廣瀬純穂、吉田貴史、細田健司、鈴木洋司、細田和彦、廣瀬雄一、望月 仁、小俣政男
山梨県立中央病院病理
小山敏雄

症例は60歳代、男性。主訴: 特記事項なし。現病歴:2009年7月の人間ドックの上部消化管内視鏡検査で十二指腸水平部に隆起性病変を認めたため、同年8月当院紹介。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸水平部に大きさ10mmの隆起性病変を認め、生検にて高分化型管状腺癌であった。低緊張性十二指腸造影では、病変は十二指腸水平部・下十二指腸角近傍の隆起として描出されたが、側面変形は明らかではなかった。超音波内視鏡検査では第II層は一部肥厚して観察されたが、第III層は保たれていた。このため、粘膜内病変あるいは粘膜下層浸潤があっても僅かであると判断し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を実施し偶発症無く経過した。切除標本の組織学的所見では、高分化型管状腺癌で粘膜下層に100ミクロン浸潤していたが、脈管侵襲は認めなかった。現在、慎重に経過観察中である。

十二指腸病変の内視鏡治療は、膵液・胆汁に暴露されていることから遅発性穿孔の報告があり、またブルンネル腺があるため内視鏡治療の際の局注でも膨隆が十分得られないことが多い。また、粘膜下層浸潤が有った場合、内視鏡治療の適応範囲に関しても明らかではない。以上をふまえ、十二指腸癌の内視鏡治療を実施したので、文献的考察を加えて報告する。