日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8.異所性胃粘膜より発生した十二指腸腺腫の1例

山梨大学 医学部 第1内科
久野 徹、高野 伸一、大高 雅彦、山口 達也、植竹 智義、大塚 博之、佐藤 公、榎本 信幸
加納岩総合病院 外科
三浦 和夫
PCL JAPAN 病理細胞診センター
渡辺 英伸

症例は77歳男性。十二指腸球部上面に大きさ約2cmの粘膜下腫瘍様隆起性病変を認め、頂上部には陥凹を伴っていた。超音波内視鏡では第3層の低エコーから高エコーの腫瘤として描出された。ブルンネル腺などの、もともと粘膜下層に存在する組織から発生した腫瘍を疑った。また病変の可動性が良好であることから浸潤性の乏しい病変である可能性も考え、十分なインフォームド・コンセントの上、診断的治療として内視鏡的粘膜切除術を施行した。病変周囲の数か所にヒアルロン酸を局所注

入し、病変の挙上を確認後スネアで一括切除した。切除後、潰瘍をクリップで閉鎖して手技を終了し、術後合併症は認めなかった。病理組織学的には病変の主座は粘膜下層であり、異型性に乏しい腫瘍細胞が、管腔形成や乳頭状構造を呈しながら増殖しており、免疫染色の結果から異所性幽門腺型腺腫と診断した。切離断端は、深部、側方断端ともに陰性であった。十二指腸球部に見られる粘膜下腫瘍様病変では、特殊組織由来の病変がありうることを考慮することは重要であり、本症例は低侵襲な方法で治療が完了した点で貴重であり報告する。