日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.NBI拡大観察を行った胃型(幽門腺型)腺腫の1例

信州大学 医学部 消化器内科
大工原 誠一、奥原 禎久、伊藤 哲也、須藤 桃子、高橋 俊晴、長屋 匡信、菅 智明、新倉 則和、田中 榮司
信州大学大学院 医学系研究科 分子病理学
中山 淳
信州大学 医学部 消化器内科、飯山赤十字病院 内科
村木 崇、山田 雪、山田 重徳、横澤 秀一
信州大学 医学部 消化器内科、飯山赤十字病院 内科、信州大学大学院 医学系研究科 分子病理学
岩谷 勇吾

症例は80歳代,女性.2009年8月に健診の胃バリウム造影検査にて異常を指摘され,上部消化管内視鏡検査を施行した.胃体下部大彎に約3cmの周囲と同色調で,表面に桑実状の上皮性変化を伴う隆起性病変を認めた.生検では,幽門腺細胞の増生を伴う嚢胞状に拡張した腺管を認め,幽門腺型腺腫が疑われた.NBI拡大観察では,villi様構造の癒合と腫大,大小不同を認めたが,透見される微細血管構造には走行不整や口径不同を認めなかった.以上より悪性所見は明らかではなかったが,幽門腺型腺腫は癌の合併率が高いという報告もあるため,内視鏡的胃粘膜下層剥離術を施行した.病理組織では,豊富な粘液を有する腺粘液細胞の増生と嚢胞様に拡張した腺管を認めたが,悪性を疑う核異型,構造異型の所見は認めなかった.免疫染色でMUC5ACが異型腺管の上層から中層に,MUC6が表層部を除いたほぼ全域に発現しており,MUC2とCD10は陰性であった.Ki-67陽性細胞は異型粘膜の上層に分布しており,幽門腺型腺腫と診断した.幽門腺型腺腫はまれな腺腫であり,NBI拡大所見について言及した報告はこれまでに無く,若干の文献学的考察を加えて報告する.