日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.ESDを施行したH.pylori 陰性の0-IIb未分化型胃癌の1例

長野市民病院 消化器内科
立岩 伸之、長谷部 修、多田井敏治、彦坂 吉興、関 亜矢子、須澤 兼一、越知 泰英、原 悦雄
長野市民病院 病理
保坂 典子

症例は60歳代,男性。自覚症状なし。集団胃検診にてMDL異常を指摘され,2008年6月30日に当科を受診した。7月23日に上部消化管内視鏡検査を施行,胃角部前壁にびらんが存在し生検にて印環細胞癌を認めた。8月8日に精査内視鏡を施行した。病変は通常白色光観察ではわずかに褪色調の平坦な領域として認識され,NBI観察にて範囲はより明瞭となった。NBI併用拡大観察では全域にわたり微細粘膜模様が残存しており,一部に構造内異常血管が確認できた。しかし微細粘膜模様の不均一な部位と比較的均一な部位が混在しており,拡大観察を用いた範囲の同定はむしろ困難であった。 約20mmの粘膜内未分化型癌と診断し,十分なI.Cのもと,適応拡大病変として9月2日にESDを施行した。病理組織学的には0-IIb, 25x8mm, sig, m, ly0, v0, LM(-), VM(-)であった。本来は追加外科切除が必要であるが,本人の希望にて現在は無治療で経過観察を行っている。2010年4月現在再発所見は認めていない。尚,血清H.pylori IgG抗体は陰性であり,生検組織上もH.pylori 感染はみられなかった。