症例は70歳代、男性。平成21年8月頃胸部の軽いつかえ感を自覚し、近医にてEGDを施行。食道に巨大な粘膜下腫瘍を認め、精査・加療目的に当科紹介となった。食道造影では頸部食道に基部を有し、胸部中部食道に及ぶ約10cmの軟らかい表面平滑な透亮像を呈した。EGDでは頸部食道後壁・右壁に基部を有し肛門側に垂れ下がるように表面平滑・黄色調でCushion sign陽性の長径10cmの粘膜下腫瘍を認めた。EUSでは第三層に主座を置く均一な高エコー腫瘤であった。CTでは腫瘍内部はCT値−83H.U.の脂肪濃度であり、MRIでも脂肪抑制T1・T2で低信号、T1で高信号であることより脂肪腫を考えた。以上より頸部食道に基部を持つ長径10cmの有茎性脂肪腫と診断した。過去に嘔吐反射に伴い有茎性脂肪腫が口腔内に逸脱し窒息した報告をもとに患者に十分なInformed consentを行い、平成22年3月全身麻酔下にてESDを施行し、病変を一括切除した。剥離中、基部の脂肪を認識可能であった。切除標本径は90×20×20mm。切除標本割面は均一な黄色調を呈し、病理組織学的にはmatureな脂肪細胞からなる脂肪腫であった。本症例は内視鏡的切除食道脂肪腫の報告例では最大径であり、文献的考察を含め報告する。