日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.内視鏡的切除を行った食道原発悪性リンパ腫の一例

佐久総合病院 胃腸科
小澤 陽子、小山 恒男、友利 彰寿、宮田 佳典、堀田 欣一、高橋亜紀子、北村 陽子、篠原 知明、福島 豊実、國枝 献治、桑山 泰治、岸埜 高明、野村 祐介

症例は80歳代、女性。胃癌幽門側胃切除術後のサーベイランス目的に施行した上部内視鏡検査(EGD)にて、中部食道前壁に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を指摘された。病変の表面は平滑であったことから平滑筋腫と診断され、約1年半経過観察となっていた。今回、超音波内視鏡検査(EUS)を施行したところ、病変は粘膜下層に主座を有するhypo echoic massとして描出された。SM層の菲薄化は認めるものの筋層は保たれていた。ボーリング生検にて食道悪性リンパ腫(diffuse large B-celllymphoma ; DLBCL)であった。腹部骨盤CT上明らかな異常を認めなかった。PET-CT上集積は下部食道のみであり、骨髄穿刺でも明らかな異型細胞の浸潤は認められず、Ann Arbor分類に基づき、食道原発悪性リンパ腫Stage I AEと診断した。現在の限局型悪性リンパ腫の標準的な治療はCHOP療法(CD20陽性であればR+CHOP療法)+放射線照射が一般的である。本症例ではEUSにて筋層が保たれているためESDが可能と考えられ、ESD+化学療法の方針となった。ESD時は粘膜下層の腫瘤を直視下に観察し、病変を露出させないように剥離した。病理組織学的には腫瘍径17×10mmのDLBCLであった。現在、R-COP療法で治療中である。