日本消化器内視鏡学会甲信越支部

84.スニチニブ投与中に肋間動脈瘤破裂を認めたNF-1合併GIST患者の一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
坂本 薫、神田 達夫、松木 惇、羽入 隆晃、矢島 和人、小杉 伸一、畠山 勝義
新潟大学医歯学総合病院 放射線部
高野 徹
兵庫医科大学 病院病理
廣田 誠一

マルチチロシンキナーゼ阻害薬である、スニチニブ・リンゴ酸(商品名:スーテント)はイマチニブ耐性および不耐容消化管間質腫瘍(GIST)患者に対して有用とされるが、重篤な副作用についても報告されている。今回、スニチニブ投与中に肋間動脈瘤破裂を生じた症例を経験したので報告する。症例は65歳女性。神経線維腫症1型(NF-1)に十二指腸GISTを合併し1992年11月に幽門側胃切除、十二指腸部分切除術を施行。その後、十二指腸断端再発、肝転移、左副腎転移、大網転移を生じ、それぞれ切除術を施行した。2003年5月より肝転移に対しイマチニブ治療を開始したが、一次耐性病変であったため、動脈塞栓治療(TAE)を5回、動脈化学塞栓治療を3回施行。 2008年8月より、肝転移、腹膜転移に対しスニチニブ治療を開始した。2009年5月、右背部痛が出現し、鎮痛剤の効果なく、当院救急外来受診。200 mmHgを超える著明な高血圧を認め、血圧・疼痛コントロール目的に当科入院となった。降圧剤、鎮痛剤の投与にて症状は改善したが、入院翌日の夜間に、急にショック状態となり、意識を消失。直ちに、ICU入室し全身呼吸循環管理及び原因精査が行なわれた。緊急CT及び大動脈造影を行ったところ、右第9肋間動脈からの出血が認められ、TAEによる緊急止血術が行なわれた。その後の経過は良好で34病日に退院した。スニチニブはVEGFシグナル伝達系阻害作用をもつことが知られている。血管異常の可能性をもつNF-1患者においては、厳重な血圧を伴う慎重な管理が必要であると思われた。