日本消化器内視鏡学会甲信越支部

85.腸間膜原発デスモイド腫瘍の1切除例

信州大学 医学 消化器外科
奥村 征大、小出 直彦、佐近 雅宏、小松 大介、関野 康、石曽根 聡、宮川 眞一
信州大学 医学部 臨床検査部
遠藤 真紀、下条 久志
市立岡谷病院 消化器内科
川嶋 彰

【緒言】デスモイド腫瘍は手術瘢痕部などに好発し,他の間葉系腫瘍との鑑別が困難な腫瘍である.今回,我々は手術既往のない腸間膜デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する.【症例】患者は43歳の男性.腹部腫瘤を主訴に近医を受診した.小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)の疑いにて手術目的に当科を紹介受診した.下腹部に可動性良好な手拳大の腫瘤を触知した.腹部CTでは骨盤部の小腸に60mm大の境界明瞭で内部が不均一に造影される腫瘤を認めた.MRIではT2強調画像で内部不均一な高信号を呈する腫瘤として描出された.PETでは腫瘍に一致してSUV max 3.8の集積を認めた.以上より,術前診断として小腸GISTを考慮して腹腔鏡補助下手術を施行した.手術所見では腫瘍は回腸間膜に存在し,一部回腸との境界は不明瞭であった.腫瘍を含めて回盲部切除術を施行した.切除標本肉眼所見では回腸間膜に65mm大の腫瘤が存在し,腫瘍の割面は灰白色分葉状で境界は明瞭であった.病理組織診断では腫瘍は軽度の大小不同を示す類円形ないし長楕円形の核を有する異型細胞が束状構造を呈して増生しており,一部に膠原線維の増生を認めた.免疫染色の結果はKIT(-),CD34(-).S-100(-),vimentin(-),α-SMA focally(+)であり,回腸間膜原発デスモイド型線維腫の診断であった.【考察】デスモイド腫瘍は線維成分が多いため,MRIではT2強調画像で低信号域として描出されることが多いが,本症例では不均一な高信号域として描出された.デスモイド腫瘍は細胞密度が高い場合にPETで集積を認めることがあるが,本腫瘍ではSUV max 3.8で集積を認めたため低悪性度のGISTと鑑別が困難であった.造影CTを再度検討したところGISTの典型的なパターンである比較的早期濃染する像ではなく,本腫瘍は造影効果が弱く,遅延相にてゆっくりと造影されるパターンが認められ,GISTとの鑑別に有用な所見の1つであると考えられた.