日本消化器内視鏡学会甲信越支部

82.イレウスにて発見された膀胱癌の結腸、回腸浸潤の1例

諏訪赤十字病院 救命救急センター
矢澤 和虎、小川 新史、瀧本 浩樹
諏訪赤十字病院 泌尿器科
清河 英雄、中山 剛

今回、壁外への進展を主体とし、他臓器浸潤から発見された稀な膀胱扁平上皮癌を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は86歳、男性。主訴は腹痛。既往歴として、約10年前に胆石とS状結腸癌で手術施行、その後イレウスで手術施行されている。その他喘息、慢性腎不全、前立腺肥大で内服加療中であった。3ヶ月前の腹部CTで膀胱の壁不正を指摘されていたがそのまま放置されていた。朝から腹痛を認め近医受診し、イレウスの診断で同夜、当院救命救急センターへ紹介となった。来院時、意識は清明で、BP:96/64mmHg、HR:80bpm、SpO2:97%(RA)、 腹部は膨満し、臍周囲に圧痛を認めた。さらに右下腹部に硬い腫瘤を認めた。血液検査ではHb6.4g/dlと著明な貧血と、腎機能障害を認めた。腹部単純X線で小腸ガスのニボー像を認め、腹部CTで腹水と下腹部正中と右下腹部に腫瘤を認めた。さらに小腸の拡張を認めた。以上の所見から上行結腸癌によるイレウスを疑い、イレウス管を挿入した。余り進まず、減圧効果も乏しかったため、続いて大腸内視鏡による経肛門的なイレウス管留置を試みた。上行結腸に腫瘍性病変を認めるものの、それによる内腔の狭窄は軽度であったため、イレウス管は留置しなかった。その時の生検結果は腺扁平上皮癌であった。膀胱癌の大腸、小腸浸潤あるいは大腸癌の膀胱浸潤と診断し、開腹した。膀胱から連続し一塊となった腫瘤が上行結腸から腹壁にまで浸潤し、さらに回腸を巻き込んでいた。肝表面にも播種を認めた。右半結腸切除術、膀胱部分切除、および回腸合併切除を行った。空腸と横行結腸を吻合した。術後多少下痢気味ではあったが、それ以外は問題なく軽快退院した。今後は泌尿器科と相談し外来化学療法の予定である。