日本消化器内視鏡学会甲信越支部

79.消化管出血を契機に発見された十二指腸GISTの一例

糸魚川総合病院 内科
吉田 啓紀、金山 雅美、野々目 和信、月城 孝志
糸魚川総合病院 外科
土屋 康紀、田澤 賢一、山岸 文範
富山大学附属病院 病理部
石澤 伸

【目的】十二指腸GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)は本邦では比較的稀な疾患である。今回我々は消化管出血を契機に発見された十二指腸GISTを経験したので報告する。【症例】54歳女性、2009年3月2日に突如黒色便を認めたため翌日近医を受診。上部消化管内視鏡検査を施行され、十二指腸下行脚に動脈性の出血を認めた。クリップによる止血後当院に紹介され入院となった。翌日の上部消化管内視鏡検査ではクリップが一つ残存し止血していた。同部位に約2.5cmの粘膜下腫瘍を認めた。腹部CTでは、十二腸下行脚に約2.5cmの腫瘤構造と不均一に造影効果を認めた。腹部血管造影検査では、腫瘍は胃十二指腸動脈分枝より栄養され、門脈本幹へ還流していた。低緊張性十二指腸造影では、十二指腸下行脚に2.5cmの壁外性圧排所見を認めた。超音波内視鏡検査では、2.4×2.9cmの境界明瞭・辺縁平滑な筋層主体の腫瘤を認め、内部は低エコー主体であるが一部高エコーも混在したモザイク様を呈していた。血液検査では、内分系は特に異常は認めなかった。以上より、十二指腸GISTの可能性を考慮し、4月13日に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では、CD117,CD34はごく一部に陽性を認めるが全体的には陰性であり、PDGFRAも高発現を認めなかった。その他SMA (+),HHF35(-),desmin(-),S100(-)であった。組織学的にはGISTに矛盾ないため、c-kit・PDGFRAにmutationを認めるが蛋白発現が少ないGISTと考えられた。腫瘍の明らかな粘膜への浸潤はなくクリップした部位の粘膜下層にはやや拡張した動静脈が認められたことから、本症例での消化管出血はGISTからではなくAVMによるものと思われた。【結語】AVMからの出血を契機に発見された十二指腸GISTを経験した。若干の文献的考察を加え報告する。