日本消化器内視鏡学会甲信越支部

78.十二指腸乳頭部腺腫様の外観を呈し、内視鏡的十二指腸乳頭部切除にて診断した限局性リンパ過形成の1例

国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 消化器科
松田 賢介、宮林 秀晴
国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 内科
松林 潔、小林 正和、古田 清
国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 外科
小池 祥一郎、中澤 功

症例は71歳、女性。2008年8月頃から心窩部違和感、心窩部痛が生じ、嘔気もあったため当院外来を受診。原因検索のため施行した上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部に凹凸不整な外観を有する隆起性病変を認め、当初腺腫を疑って生検を採取した。組織学的にリンパ腫を疑う所見があり、治療法の選択とステージングのため腹部CT・PET・骨髄穿刺などを施行し、十二指腸乳頭部以外の病変は認められず、超音波内視鏡などで乳頭部の深部に病変は認められず、再度の生検で上皮性腫瘍・悪性リンパ腫・MALTomaいずれの所見にも乏しいこととリンパ腫の可能性があったことから診断と治療を兼ねて内視鏡的十二指腸乳頭切除術を行った。膵管・胆管いずれもステンティングを行ったが、軽症膵炎を起こし、絶食・補液・抗酵素剤投与で早期に回復し、出血など他の偶発症を認めなかった。組織学的には免疫組織染色を含めた診断で良性のリンパ過形成と診断し、現在経過観察中である。同部位のリンパ増殖性疾患は腺腫様の外観を呈することがあり、鑑別診断と過剰な治療の回避のため乳頭切除術も必要な手技と考えられた。