日本消化器内視鏡学会甲信越支部

77.胃癌根治切除後7年を経過して発症した気管支内転移の1例

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器・一般外科
羽入 隆晃、神田 達夫、松木 淳、矢島 和人、小杉 伸一、畠山 勝義
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 分子細胞病理学
長谷川 剛
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸循環外科
土田 正則

【背景】肺外固形悪性腫瘍からの稀な肺転移形式として気管支内転移があるが、胃癌からの転移の報告は少ない。我々は進行胃癌に対して根治切除後、7年を経過して発症した気管支内転移の1切除例を経験したので報告する。【症例】症例は51歳、女性。1999年11月に食道胃接合部癌に対して膵脾合併胃全摘、経裂孔的根治的食道切除を施行した。総合診断はT4(膵浸潤陽性)N2H0P0M0Cy0 Stage4であり、術後化学療法としてMTX+5FU療法を16 cycle施行した。無再発経過中、胃切除より85か月後のフォローアップCTにて右肺中葉にスリガラス様陰影を伴う2.6cm大の肺結節を指摘された。喀痰細胞診でclass5の診断が得られた。2007年2月に原発性肺癌の術前診断のもと右肺中葉切除を施行した。切除標本はHE染色では原発性気管支癌の所見であったが、抗TTF-1抗体、抗CDX2抗体を用いた免疫組織化学検査にて胃癌の気管支内転移と診断された。肺切除より6か月後、多量の腹水貯留を認め、精査にて腹膜播種および左卵巣転移の診断に至った。weekly paclitaxel療法(100mg/day, 3投1休)を速やかに開始し、8 cycle施行後には腹水および左卵巣腫瘍ともに消失し、臨床的にCRと診断された。現在までweekly paclitaxel療法を継続しCRを維持、肺切除より31か月経過して生存中である。【結語】気管支内転移の予後は一般に不良とされているが、異時性転移で切除可能な進展様式をとる症例がある。手術・化学療法などの集学的治療を適切に行うにあたり、免疫組織学的分析を含む正確な病理診断が重要と考えられた。